farewell！深町丈太郎！
あんたに最後にあったのももう随分昔のこったな！
あんたが現役の漫画誌から降りちゃったのが1994年なんで、おれは34歳だったかな。トラブルなんでも来いみたいな顔して、知ったようなフリして世間渡った気になってたよね。あとで手痛い仕打ち受けるなんて思ってもなかったしね。まあわかってても忠告なんて聞くたまじゃなかったろうけどね。それは今もおんなじか。
TVドラマの「事件屋稼業２」であんたを観たよ。
寺尾聡さんが扮してる「あんた」のおとぼけ顔はシャーク深町とはちょっと違うかもしれないけど、まあそれはいい。大いなる目で許しちゃおう。あんたが帰ってきてくれておれはほんとに嬉しいと思ってるんだぜ。竹中直人さん扮する五島田警部も真ん中分けじゃないし、コミカルすぎるし、ハードボイルド杉浦歯科女子も漫画よりも随分優しい佐藤江梨子さんになっちゃったしね。それでもあんたが昭和の匂いをまき散らして帰ってきてくれたのは実にうれしいことだよ。困ったことあったらおれもあんたに事件を依頼する日が来るかもしんないよ。トラブル・イズ・マイ・ビィジニィイイイス、だったよね。昭和は、思えば随分コミカルだったよね。もうあんなに軽やかに踊ることなんてできないかもしれないけど、洒落にならなくっても、また酔って一緒に歌おうぜ。
そういえばシャンデリアが落っこちて死んじゃったあのヤクザの黒崎さん、あの人こそが昭和そのものを体現してたような気がするんだよ。うちの泌尿器科の教授も死んで、この４月には、泌尿器科から看護学科の教授になられた先生の退官パーティまであるんだぜ。その先生と一緒に、「えひめ排泄ケア」やってたSさんも癌で死んじゃったんだよなあ。未だに信じられないでいるんだよ。ペースメーカー入れてるのににニコニコしてタバコ吸ってさ、あのカウンターでまた濃い眉毛でこっち見てニッと笑ってるようなきがするんだよ。一体全体どうなってんだよ。若いやつにはどうでもいいことが、ブロウのように響いてくるこの頃ですよ。しみるよね、酒も、想い出も、全部みんな。おれも現役でやってるけどさ、もう５３歳なんだからね。
