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だからオレは泌尿器科医でおしっことちんちんの医者なんだってば!(2)

生きる速さで書きなぐることができたらいいのだけど・・

#79 ひとり『原田芳雄祭り』その7 芳雄さんへの手紙〜「オリヲン座からの招待状」(2007)

原田芳雄 日々の戯れ言 CINEMA

オリヲン座からの招待状 [DVD]

拝啓、原田芳雄様、

ずいぶん長い間ご無沙汰しております。
お変りないことと信じております。
こうやってあなたと会おうとすると、目を閉じるだけではかなわぬようになってきて、
プラズマの画面に目を凝らさなければならなくなってきたことに一抹の寂しさも感じる今日このごろです。
さて、6月の梅雨の隙間、穏やかな風がよぎっていきます。
隣に立った家は今日が引っ越しで、荷物がクレーン車で釣り上げられていますよ。
どんな人達がそこで暮らし始めるのでしょうね。どんな家庭が生まれてゆくのでしょうね。
今回のあなたは「オリヲン座からの招待状」という映画の中に生きておられました。
戦後から守り続けてきた映画館。しかし映画産業の盛衰と時代の流れには逆らえず、サヨナラ興行をする日がとうとうやってくる。その「オリヲン座」の館主の役でした。
始まりがあれば終わりがある、人の人生にも。映画館にも。
あなたの愛したフィルムもどんどん消えてゆき、デジタルの時代に変わっております。
いつかおれの人生にも時代遅れは来るかもしれないし、それはおれが気づいていないだけでもうそこまで来ているのかもしれません。
でも、ひとは自分の人生をやり直すことはできないんですよね。
いい意味で。
あなたのお友達の桃井かおりさんのことも最近なんだか気になっております。
それは、中村雅俊さんと「プカプカ」を歌うかおり嬢であったり、
鶴田浩二に愛されて死んでゆく、NHKドラマ「男たちの旅路」の中のガードマンのかおり嬢だったり、
「前略お袋様」のうみちゃんだったりします。
そういった画面の中に永遠に生き続ける生き方を、いやほんとはそれを心の拠り所にすることを、芳雄さん、あなたも「否」とは言わないと信じています。
同じストーリーはDVDやらネットで何度でも再生され、永遠に残り続けてゆきます。
ただその中の後ろ向きの部分だけではなく、その画面から、観る人のそれぞれの心のなかで、「ドラマ」は成長し続けていくんだと思います。
だから、「オリヲン座」がなくなっても、そこで出会ったカップルが別れても、宮沢りえさんの命が尽きても、
「オリヲン座」も生き続けていくんだと思います。
昨日はうちの病院の納涼会で、夜中くらいにはほぼ居酒屋の机に突っ伏して寝てしまっていたんですけど、
一次会の挨拶で、薬局の社長が、うちの病院の15週年を祝ってくれました。
15年ですよ。いろんなことがありましたよ。こんなちっぽけな人生にも。
二人で病院を始めて、今ではこんなに多くの人と酒を酌み交わせる。
そしてまだしばらくは家人と二人で手を取り合ってやっていけそうです。
それって、もしかしたら「オリヲン座」とおんなじじゃないのかなって。
ひとは確かに忘れてゆきます、でも、絶望も忘れることができるなんて素晴らしいと思いませんか?
だからこそそこを超えてゆくことができるんですよね?どん底を。後悔を。
原田芳雄様、偉そうなこと言ってすみません。
まだまだガキです。また便りします。失礼しました。