だからオレは泌尿器科医でおしっことちんちんの医者なんだってば!(2)

生きる速さで書きなぐることができたらいいのだけど・・

#166 「トニー滝谷」①


トニー滝谷 - YouTube

 

 

 トニー滝谷の人生の孤独な時期は終了した。朝目覚めると彼はまず彼女の姿を求めた。隣に彼女の眠っている姿が見えるとほっとした。姿が見えない時には不安になって家中を捜しまわった。孤独でないということは、彼にとっていささか奇妙な状況であった。孤独でなくなったことによって、もう一度孤独になったらどうしようという恐怖につきまとわれることになったからだ。

(「トニー滝谷村上春樹レキシントンの幽霊」より)

 

 

 

孤独なくせに孤独でないのが人間存在だ。生まれる時だって人の手を借りなきゃいけないし死んだあとも誰かのご厄介になる。死ぬときはひとりだと言ったってなかなかそう綺麗にはいかない。だから、孤独死したヒトのニュースを新聞で見かけると、無人島よりも孤独な荒涼たる場所やら光景なんて自分は思いつけずに、ぞっとする。それだけだ。そこにイマジネーションはすでに欠如している。そういえば「Castaway」で、無人島に漂着したトム・ハンクスは、破れたバレーボールに名前をつけた話しかけてたなあ。辛い時期にひとりであの映画を見た。ただただあの映画を見たんだ。あの映画のラストはどうなるんだったかな。ハンクスが荷物を届けて道路に立つんだったのかな。死ぬ時だってきっと答えなんてない。実際の人生でも。それでも何かにしがみついて生きていかなきゃならない、誰かのために、何かのせいにして?トニー滝谷は最後にほんとに一人ぼっちになってしまったんだろうか?おれもきっと毎日孤独に怯えながら生きてるんだと思うよ。だって手を離せばあっという間に絶望的な孤独の渦に飲み込まれて、きっとその中では、上も下もわからないし、息をすることもままならなくって、でもいつかそれが当たり前になってしまって、厚いガラスの壁の向こうから眺める寂しい景色みたいなものを見ながら長い長い時を過ごさなきゃならなくなるような気がするから。でも誰からも必要とされない孤独は容易に想像できてそれも怖くなる。

(映画版の「トニー滝谷」ってyoutubeレンタルでもみれるんだね。)

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レキシントンの幽霊