「国境の南、太陽の西」。
なにも変わらない変われない自分は一体どこへゆけばいいんだろうか。そう読んでいる自分も思った。セックスと暴力と死と虚無。そんなものを抱えながらも誰の声も聞かずに生きてきたんじゃないのか。つらすぎる。そしてそれから目を背けるなと言われても自分は誰の顔もまともに見てこなかったんじゃないかという慙愧の念ばかりが浮かぶ。おれはたとえば誰かを救うことができたのかもしれない。でも誰かを傷つけてもきたんだ。
ときどき、泣くことができれば楽になれるんだろうなと思える時もあった。でも何のために泣けばいいのかわからなかった。誰のために泣けばいいのかがわからなかった。他人のために泣くにはぼくはあまりに身勝手な人間にすぎたし、自分のために泣くにはもう年を取り過ぎていった。
そんなわけで、これから東京にゆくんだけど、村上春樹さんを携えていくのではなくって、ラングストン・ヒューズ詩集を友にすることにしたんだよ。