だからオレは泌尿器科医でおしっことちんちんの医者なんだってば!(2)

生きる速さで書きなぐることができたらいいのだけど・・

#237 byebye

誰かが死んでも時は流れてゆく。

そしてそのヒトのことをやがて忘れてしまう。

無情のようだが、忘れられるからこそ超えてゆけるものの重さを僕はもう知ってしまった。忘れることができなかったら人間はなんて哀しすぎるんだろう。

そうじゃなくっても、この世の中は哀しみで満ち溢れすぎているのだから。

彼女の死の知らせを親切な方が知らせてくれた。彼女は長い間闘病していたんだ。ほんとに悪い病気だったんだと思う。何年間かの闘病の果てに彼女がどう死んでしまったのか今は知る由もない。まだまだ若いとっても若い彼女の死。

彼女は自分の病気をまるで他人のことのようにコケティッシュに表現したり、時には泣き喚いたり、時には憐憫でヒトを誘ったり、だけど、結局その詳細を自分は知らない。何も知らない。彼女は知ってほしくなかったんだとも思ったりもする。

彼女の途切れ途切れのコトバに対して自分のできることといえば、うなづいたりごまかしたりするだけだった。

そしてそんな死で世の中はあふれている。なのに彼女の「死」の前の数年はなぜ自分の隣にあったのだろう?いや、死ではないな。彼女の生が、この世界の片隅にいる自分のことを、きっと敏感なアンテナで見つけてくれたんだろう。

心が触れ合ったとか魂が触れ合ったとかそんなわけもない。ただおなじ通りでしばらく一緒に歩いて、そして、彼女は「センセ、わたしはこっちいくからね、一緒にいきたいかもしんないけど、今はダメ、またあとでね。ほらそんな顔しないの、ね、バイバイ」って手を振って左に折れた、それだけのことなんだろう。

バイバイのそのコトバはだから今も耳元に残っている。

彼女の言葉を一つだけ、『でも命って、長さじゃなくって質だと思うんだ。

 

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photo by jasohill