だからオレは泌尿器科医でおしっことちんちんの医者なんだってば!(2)

生きる速さで書きなぐることができたらいいのだけど・・

#520 夏休みの読書 「笑う山崎」(花村萬月)

笑う山崎 (ノン・ポシェット)

 
久々に本をじっくり読もうと思った。
 
日常的には時間を切り貼りして生きているので、読書にまとまった時間をとることはほとんどない。
(ほんとないねー)
まとまった時間といえば、寝るときと、外来で診療している時間と、無駄なのか有益なのか皆目検討もつかない飲酒宴会の時間だなあ。
 
それで選んだのはなぜか古い本だった。
 
奥付を見てみると 平成8年10月20日初版第1刷発行と書いてある。
この診療所を始める2−3年前なので、愛媛大学に勤めてた最後のヘンかなあ。まああの頃も違った意味ですさんでたかもしれない。いまよりも(苦笑)。
 
花村萬月さんの「笑う山崎」というハードボイルドというか極道のストーリーだ。
 
山崎はヤクザには似合わぬ色白・非筋肉質体型のヤクザだが、残酷無比冷徹なこと限りない。
京都の組を揺るぎない存在に変え、関東のとある組の目付としてやってきた。
小説内ではとても映像化できないような酷い拷問シーンが延々と描写される。
これに比べたら「東京喰種」のカネキ君のシーンも、彼の倫理観のステップアップがあるから可愛いかも 、てなくらいだ。
冒頭からフィリピーナのマリーの鼻を潰してから求愛する。病室でいきなりセックスを始める。そのくせアルコールはからっきし駄目で、それでもビールを飲んで「アイシテル」を続けて、気を失ったりする。他の場では気を抜かないのに、彼女にだけは特別だ。だからますます恐ろしい。
 
山崎は平然と手を血で汚し、振り返ることなくその世界さらにさらにを染めてゆく。
でも、彼の倫理観には全く揺るぎがない。
その倫理観にきっと 昔はひかれていたんだと思う。
 
今はそこまで冷徹になることはできない。
でも自分の今の立場って、この本を読んだ昔よりは冷徹になれるところにはいるのではなかろうかとは思ったりする。
そんな自分を糾弾したいわけでもない。
だって、世の中には「立ち位置」とかそんなものが存在して、それ故に萬人の言う「平等」なんて幻想なんだということはわかるようになったから。
そのなかで折り合いをつけて常識人ぶってるだけだ。
だから根拠もない熱い会話には時にしらける。酒でもぶちかけてやりたくなって、ひとり杯を重ねる。
だからヒトを批判する暇があったら、自分で何かをやりたい(行動することだ)と思うようにしている。
実際そうしているつもりだけどまだまだ足りぬ。
 
松山から伊丹を経て、乗り継いで、千歳まで行く飛行機の中で黙々とその本を読み続けた。
 
周りの光景がいつしか不透明になってゆき、自分はその世界に没頭して、頭から足の先まで殺されてゆく者たちの血と臓物でいっぱいになった。
彼らの気持ちとはしかし寄り添って歩くことはできない。
 
それにしても花村萬月やっぱりすごい作家だ。