#45『そんな夜に』
凍った窓が白く曇ってしんしん鳴っている
コンクリートの床で音を立ててるストーブの炎
煤けた薬缶から出る蒸気がずれた蓋を踊らせてる
あの街で君と出会い
あの街で君と別れた
そこから遙か遠くの空の下で
君のことを思い出す
なんだか遠くって近くって不思議な気分さ
ラズベリーをお腹いっぱい喰ったグリズリーの未消化の赤いウンコ を鳥がついばみ、
鳥は羽ばたき、種をアラスカの地に拡げてゆく
誰かが誰かを抱き 例えば黄色い肌から白い肌へ
そうやって生命も拡がっていくのだろう
生命の連鎖も続いてゆく
罪深き人の世にも慎み深い御子の魂にも
酒に酔って世をすねるオレに
世の中にね、意味のない事なんて一つもないんだよ
オレの瞳の奥に君はそう語りかけたものだ
だからね、心配することなんて一つもないんだよ、ダーリン、って。
湯気の奏でるリズムに
そんなこんなを思い出した
あの時の後悔や懺悔は不思議なことになくなってしまった
君はいなくなってしまったのにね
不思議だな
いや、そうか、君はずっとぼくのそばにいたんだね、そうだ、 いるんだよ、今も。
おかえり。(ただいま。)
いつの間にか首を妙に曲げたまま寝ていたことに気づき
テーブルの上に残った冷めかけのお湯割りを口に含むと、
まったく夜は深い
でも今夜は深い夜の混沌と豊穣にますますこんがらがっていこうと思うんだ。
macのことを書いたエントリーにコメントを頂いた。それには、あの懐かしい星野道夫さんの奥さんのことが書かれていた。数年前、松前文化センターで、奥さんによる星野道夫さんのスライドショーがあった。それを主催されたという井上さんという方からのコメントだったのだ。彼は当時の自分の書いたblogを読んでくださったという。そのことにも感謝なのだが、そのじぶんのエントリーを眺めていると、なんだか泣けてきた。上の詩が、多分、星野道夫さんにinspireされてできた詩なんだと思う。その自分で書いたはずの詩を疲れた脳髄で眺めていると、なんだか不意に胸の隙間からずんずんと心の奥底に入り込んでいっていつしか泣けてきたんだよ。単純な男である。日々自分がどこにいてなにをしているのか、なにがうつつでなにがまぼろしなのか、わからなくなりかけている今の自分に、この詩は「いいんだよ」と語りかけてくれたのだった。もうなんだかぼろぼろなんだよね、実のところ。そんなわけで再掲載です。