#69 死ぬまでに観るべし!映画 その2「the fabulous baker boys」(1989)
「女のいない男たち」なのかどうか正確にはわからないけれど、
邦題「恋のゆくえ」という「the fabulous baker boys」(1989)を見た。
大好きなミッシェル・ファイファー31歳の時の作品だ。
(真っ赤なドレスで、グランドピアノの上で妖艶に歌うシーンは有名だ!)
15年間続いてはいるもののぱっとしない、兄弟ピアノバンド「 ファビュラス・ベイカー・ボーイズ」に、 女性ボーカルのスージー・ダイヤモンド(M・ファイファー)が加わる。
バンドはみるみるスターダムにのし上がる。
でも、スージーがCM会社に引きぬかれて脱退することになって、バンドは解散し、
それを契機に今までの兄弟のしこりまでもが噴出して、「ベイカー・ボーイズ」も消滅し、
喧嘩別れする二人の会話よりー
「おれは君と2度やった(FUCK) それきりだ (きみは)おれのことを何もしっちゃいない」
(ジャズ・ピアノのアドリブをを嬉しそうに笑いながら弾くジェフ・ブリッジを見たのだった
「ベイカー・ボーイズ」では決まった曲順、決まった演奏しか許されない)
あの時のあんたの顔を見たのよ。
あんたは情けないすね者よ。
毎晩どこかのバーで自分をたたき売ってる・・
わたしも経験あるわ。
行きずりの男と寝て自分に言う。
‘気にする事はない記憶を空っぽに‘、でも空っぽになるのは自分自身よ」
「哲学のわかる娼婦か!」
「ポン引きよりマシよ。あんたは・・負け犬だと思ってたけど本当は・・臆病者よ!」
そんな風に喧嘩別れした二人だったけど、映画のラスト、スージーを訪ねていたジェフは出勤前の彼女にあって、
「きっとまた逢えるさ・・何となく感で分かるのさ」という。
スージーは何も言わず、薄く笑いを浮かべて(そんな風に自分にも見えた、でも、残念ながらその笑いは、肯定とはとても思えなかったけど・・)CMソングの収録に向かい、踵を返す。
絶妙な余韻だ。
でももう愛しあった夜は戻らないこともお互いわかっている。
ジェフ・ブリッジズは「女のいない男たち」にもどった。
でも彼は今までもそうやって生きてきたのだ。
自ら女を必要としなかった男が、今になって、肩を並べようとしても、時は待ってはくれない。
確かに覆水はそう簡単にはお盆にはかえらないんだ。
映画のあと、おれも自分の心の底を覗いて、 自分の闇を見ようと思った。
目を閉じて、目を閉じて、
やっと闇に慣れてきて、さあ、 おれの心の底が見れるかなと思ったら、
ぺらっぺらの黒い紙が一枚敷かれてるだけだったよ。
笑えるね、全く。
そんな薄っぺらなものを後生大事にとっておくくらいならと、
「太陽と北風」の絵本の書割のバックから出てきた「風さん」 が丁寧に吹き飛ばしてくれた。
そうやって、その吹き飛ばされた紙の下の薄っぺらな別の何かを、 どんどん、どんどん剥がしてゆけばいいんだと思う。
剥がし続けるうちに何か思いつくかもしれないし、
それだけで終わるかもしんないし。
たとえその行為が自分を埋める穴を掘ってただけの人生に帰結しただけだったとしても、とにかく続けることしかないんだ。