#255 「透析剤発売50周年記念-愛媛県講演会-」 at 松山全日空ホテル
扶桑が透析液をリリースして50年だそうで、その記念講演会があった。
うちも扶桑さんのCa2.75meqの透析液を使わせてもらっている。最近二次性副甲状腺機能亢進症に対する治療に関しても、オキサロールとかロカルトロールがリリースされてからは、めっきり手術対象は減った。しかしこういった製剤の多用のせいもあってか、血中Ca濃度はややもすれば上昇しがちになるので、とか、まあその他の生体のCaバランスとしてどのくらいのCa濃度が妥当か、などという観点から、2.75の採用となったわけである。数年前のことだ。
でも、やっぱり血中Ca高い人は何人かいるわけで、今度はシナカルセトなんて薬使って下げたりと、まあ手駒は増えたけど、増えたなりに、考えなあかんことも増えてきているのでした。
記念講演なのか、なんと演題は2つ。
「季節を考えたCKD-MBD」鴨島川島クリニック院長 川原和彦先生
先生はもともと小児腎臓病専門で、150名程度の透析患者さんを見られているそう。最後に少しだけお話したのだが、「患者数が、50→100→150と増えるたびに診療の質が下がるっていわれてますねえ、まさに実感しますよねえ」ということを言われており、95名の患者さんを見てアップアップの自分にとってもなかなか突き刺さるコトバだった。
「透析患者の腎性貧血治療薬」甲南病院副院長 藤森明先生
柔らかい関西弁で、シンプルかつ示唆に富んだデータを示された。鉄代謝を改善しつつ行う貧血治療としては、CERAの1/2w投与がベターだったとのことでした。この講演でも、また経口鉄剤の有用性が語られていた。リオナという二価鉄を含むP吸着性剤が出て、その内服がまた鉄補充になることを考えると、今後の透析医療における鉄の補充形態も変わっていくのかもしれない。先日の四国透析といい、やはり世の中には流れというものがあるのだ。
現在開発中の経口製剤のHIF安定化剤についての紹介もあった。低酸素状態になるとHIFというものが安定化してそれが造血を促進するというものだ。マラソンランナーが高地トレーニングをすることによって造血機能を高めて、その効果を低地で発揮するというものである。そのHIFを安定化させるような製剤らしい。腎不全患者で、すべてのエリスロポエチンリリースが枯渇しているわけではないだろうから、もし投与によってその人自身の持っているエリスロポエチンの活性が上がって、貧血をまかなえるのならそれにまさるものはない。でも、そこまで効くのかどうかはまだ治験中とのことでした。
今調べてみたらアステラス製薬さんが開発中らしい。ありゃりゃ。
透析液の講演会なのに、ほかの会社の薬のデータ出したりと、なんだか面白いですね。ほんと新薬には高いお値段が付けられ、また医療費は高騰するけど、患者さんにとっては福音であり、でも現実問題として医療経済は崩壊寸前で、世界に冠する日本の透析医療は患者の高齢化や(将来の)透析医の不足のもとでどうなっていくんでしょうね。まあこの歪んだ世界がどうなっていくのかわからないのと一緒なんで、誰にも論じることなんて不可能なんでしょうけどね。
そのあとの懇親会は21時スタート。締めの挨拶をとか言われちゃって、させてもらいましたよ。ま、それなりに歳取ったってことで、ホント透析医療に開業してどっぷり取り組んでもう16年、進歩あるのかないのかわかりませんが、皆さんよろしくおねがいしますね。