#335 開高健というヒトがいたねぇ。
開高健の肉声を聴く。
朝日新聞デジタルで、作家の朗読の連載があり、Webだと肉声が聞けるという素晴らしいものだ。
かの作家は「ベトナム戦記」で、少年が銃殺されるシーンを読み上げた。
少年の肉体に幾つもの穴が穿たれ、そこから血が噴出する描写は、リアルそのものだった。
最近やっと観た「アメリカンスナイパー」で、街路で迫撃砲を拾って手にして、撃とうかどうか迷う少年に狙いをつけるスナイパーが描かれていた。やるんじゃない、さもなくばおれはお前を撃たなければならないんだ。少年は彼にはやや重い迫撃砲を置いて去ってゆく。スナイパーは胸をなでおろす。
でも、家庭も生い立ちも関係なく、殺すか殺さないか、それだけが戦争という物の本質なのだ。誰かを殺さなければ、その誰かがまた誰かを殺してゆく。その果てしない連鎖だ。
戦争は決してなくならない。一撃で多くの人間が肉塊に変わる。
その一方で、たしかに、ブラックジャックが言ったように、医者は一度に救えてもせいぜい一つの命しか救えない。
今はそんなヘヴィーな読書をとんとしないようになったなあ。時代はヘヴィーだけど、読書はヘヴィーさを表面上は捨ててしまったようにも思える。考えるに、村上春樹はやっぱりミニマリストでありつつも世界を俯瞰するという、今の世の中にマッチした作家なんだなあと思う。