#425 雪は止むことなく、少女はつぶやく。「生きるのは 最高だったよね・・」(「少女終末旅行」)と。
雪が降る
あなたはこない・・なんて歌があった。
「少女終末旅行」のアニメを見終える。全12話。いい話だ。
ここには安易な希望もない。絶望はあるのにだが暗くない。
チトとユーリは死ぬまで生きるのだろう。雪が振り、二人の上に積もって見えなくなるまで。
「マッチ売りの少女」という非常にメジャーなのに救いがないような、あの話を思い出した。
消えたマッチの傍らに眠る少女の死体を、町の人々は「かわいそうにマッチで暖を取ろうとしたんだねえ・・」と過ぎてゆく。
少女の顔が安らかな微笑みで満たされている理由など、誰も知るヨシがない。
誰かが死んで、そのデスマスクを刻んでみても、その人の死をトレースすることなんてできないように。
昔もどこかで書いたけど、あの日本の教科書にも載るような有名な三好達治さんの詩も然りだろう。
太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。
という有名なものだ。
あの歌は、もはや自分くらいの世代には「パブロフの犬」くらいの条件反射を起こさせる。
そしてそれは決して悪い気分ではない。
でも、隣りにいた若い女の子は、「曲はなんとなく知ってるけど中身は知らないです」ってあっけらかんと言い放った。
まあ我々が英語の曲に抱いているものだって妄想に近いのだろうからおんなじだろうけど、
たしかに季節がめぐり、春が来て、汽車のホームで旅立ってゆく女の子の幻想は・・
もはや「妄想」でしかないのかもしれない。
でもやはりおれのなかには「あの娘」は確実に棲みついている。
棲みついて離れんのだよ。
だから余計にタチが悪いのかなあ。
「なごり雪」に出てくる女の子も、美咲みたいに999に乗って、あの夜空の果てまで行っちゃったのかもしれないなあ。
動き始めた汽車の窓に 顔をつけて君は何か 言おうとしている君のくちびるが さようならと動くことがこわくて 下をむいてた
みんな去ってゆく。いろんな別れとか死とか、ほんとに雪のように積もってくね。
だけどね、残されたものは、
チトだったかユーリだったかのセリフみたいに、
「生きるのは 最高だったよね・・」って「絶望と仲良く」しながら疾走し続けるしかないんでしょう。