#667 Graveyardの月
今夜の月はやけに綺麗だねえ
おいおい べそかくんじゃないよ
だいのおとながみっともないねえ
なに あのばあちゃんの作ってくれた草餅を思い出した
あはは そりゃ仕方ないか
そうだね
今までいろんな終わりに出会ってきたけど
考えてみるとそれは必然のことだったのかもしれないよ
まったく そうかもねえ
振り返るわけじゃないけど
奇跡みたいな人生にも出会ったこともあったなあ
だって そもそも生きてることが奇跡だからね
生と死は繋がっているからわしはなぁんの心配もしとらんぜ とも言われたけど
それを聞いたときにはその意味するところがよくわからなかったっけ・・
終わりは誰にも等しく訪れ
雨は大地を濡らしてゆくだろう
いつか観た映画のような1シーンが
脳内で再生され続けているんだ
カンカラいっぱいくくりつけた霊柩車が音を立てて走り去るんだ
あんたを乗せてね
あんたの亡骸を乗せてね
何度も 何度も再生される映像には
もはや懐かしささえ覚えている
雇われた泣き女が号泣する
雇われたちんどん屋が太鼓を鳴らす
歪んだ空気の向こうに
ジム・モリソンが笑いながら立っている
オルガンが不協和音を鳴らす
あのメロディを口ずさんでくれよ
あのメロディを奏でてくれよ
海が割れて 現れた白い砂浜からは
磨かれたような 真っ白な骨が突き出している
死んだからって 人間そう変わるもんじゃないんよねえ
だから心配すんな
笑いながらじいちゃんは盃を傾けた
死ぬ前にもう一杯でっかい盃でしこたま飲みてえなあ
あんたにそれを許す勇気はあるかい
おれの主治医の小僧先生よ
オーベンに怒られるぜ
それでも やってみるかい?
こんなことなら
こんなことなら
あの時 あなたに
子犬みたいに飛びついて
あなたのほっぺに
ベロベロ ベロベロ するんだった
そんなそれも
こんなこれも
あんなあれも
朝がきたら
みんな消えてく
薄くなって
白んだ風景に溶けてったよ
白い月が
明るい空に
かろうじて残っているのが見えた
そう
白い月さ
白い月さ