肥大する自我。
欲望はとめどなく、
あるいは泉のように湧き出るのか、
あるいは下痢便のように滴るのみか。
良くも悪くも、正義も悪もない。
ただ混沌あるのみ。
誰もとめるものなどいない。
口を開けたら貪り喰らい、ブヒブヒと鼻を鳴らして飲んで、酔って濁った眼で他人を見下す。
おれの場所もお前の場所もとっくにないのに、まだ居座っている。
いや、目があいたまま気絶してるだけのことか。
足るを知れ。
足らぬを悔いるな。
おのれの寸法を把握せよ。
小人が巨人の服を着て歩いている。
あの娘は一生懸命つま先立ちで未来を見ようとしたよ。
でもあの娘はそのままの姿勢で、天に登ってったよ。
誰も彼女をとめることはできなかった。
それなのに、
中身のない陰茎に、血液以外のなにを入れて、
お前は欲望以外のなにをこの期に及んで膨らませようとしている。
自分のメロディを歌えよ。
はずれても稚拙でもいい。
自分のメロディしか、血にも肉にもかわってくれないんだから。
等価交換で十分だ。
あの錬金術師も言ってたろ。
何かを失わないと何かを得ることはできないんだって。
誰も右の手を落として差し出せなんて言ってはないよ。
お前は鉛で金を釣ろうとしているんだよ。
鯛釣り船に帆かけてシュララララ
泥の船は溶けかけて
たぬきの背中は行灯の油で燃えている
足るを知れ。
足らぬを悔いるな。
おのれの寸法を把握せよ。
きみと風になれたら
きみと水滴になれたら
きみと宇宙(そら)になれたら
そんな夢を見たんだ。