#456 Moon above the graveyard (マイ・アイリッシュ)
Moon above the graveyard
これを書いたのはちょっと前のことにはなるんですけど、
昨日のビアフェスフェスタでアイリッシュのグループで演奏するにあたって、フィドル(アイリッシュ音楽ではバイオリンをそう呼ぶ)は3本で必死でやったんですけど、その時に、他の二人に迷惑かけてはいけないなあと、ほんとにほんとに真面目に練習しました。
日本ではアイリッシュフィドルの参考書なんてないんですよね。だから練習の過程でいろんなYouTubeの動画を見たりして、いろいろ頭ん中にまとわりついているものが徐々に膨らんでいって、ある日急に形をとったんですよ。
その瞬間、なんだそうだったんかと嬉しくなったので、記録しておきます。
Moon above the graveyardあんなに降ってた雨が上がり雲の切れ間からは柔らかなあかりがツチの下からみんなのざわめきが聴こえるよしわくちゃの新聞紙をツルツルの石に敷いて腰を下ろしながらポケットのフラスコに口をつけるこんな夜には アイリッシュささあみんな そんな狭いとこで寝てる場合かよさあ 素敵なおれのあの娘 お手を拝借!目を覚まして 互いにお辞儀して ポルカを踊るよ鳴らせfiddle 響けguitar!バウロンが跳ねる ティンが飛ぶ!そして 夜の精霊と あの世の魂たちと 朝まで踊ったのさそれがgraveyardの月さ!
これがアイリッシュなんだと天啓のように思いつく。
日本の墓所とは違うけど、鬱蒼として森を抜けると平坦な墓地につき、
そこで豪雨が途切れて、木の枝の間に低く赤いお月さまが顔を覗かせる。
ポケットのウイスキーの小瓶を開けて、口に注ぐ。
それまでにももう酔っ払ってるんで、気分がそう変わるわけでもない。
誰かのツルツルに磨かれた墓の土台に腰掛けて、目を閉じて耳を澄ませると、
土の下から、いろんな魂の声が聞こえてくるんだ。
不思議なことに、恨みつらみとか、未練とかは聞こえてこない。
その中に、おれのあの娘の声も混じってることだろう。
多分もっと生きたかったはずなのに、(いるのかいないのかわからない)神様が連れてってしまったあの娘の声も。
みんな、踊りたくってウズウズしてるんだ。
だってここは寂しすぎるよ。
こんなにツチがじっとり湿って、そんで雨も上がって月が出たのなりゃ、
それがmy irish。
そう、おれのなかでやっとirishがストンと胃袋の中に落ちていった瞬間だ。