#620 もっともっと寒い冬がくる。
死んだらどこにゆくのかな
もうここでは会えないのかな
前菜はタコとアボガドのサラダ
ちょっとピリッとわさび菜で味を締めてみたよ
夢の中で会っても
目が醒めたらやっぱり空っぽのベッド
心のなかにはvacancyの札をぶら下げておくよ
いつかキミが帰ってきたときのためにね
食卓を飾ろう
おいしい食事ととびっきりのヴァンナチュールワイン
でも口から出るのは悲しい話題
れんこんとひじきと
梅干しと醤油とマヨネーズのサラダって
不思議な取り合わせだな
あら そうでもない?
涙で語るのはガラじゃない
思い出というほど近くもない
追憶というほど遠くもないかな
あたたかい感触が
まだこの手の内にある
だから
冷めないうちに
クイジナートで作ったズッキーニのスープを飲みなよ
あの焼き場の昼下がり
一瞬のすきに
鉄の台の上に残った骨を口に放り込んで齧ったよね
そしてこちらを向いてえへへと笑った
まるでこの世の終わりと向かい合ってそれを乗り越えた直後みたいななんとも言えない顔で
キミが笑った
キミは笑った
あの笑顔を覚えてる
もっともっと寒い冬がくる。