だからオレは泌尿器科医でおしっことちんちんの医者なんだってば!(2)

生きる速さで書きなぐることができたらいいのだけど・・

#656 クマの冬眠中は、膀胱に溜まったおしっこが吸収されて、水分の恒常性維持が行われてるんだって。わくわくする話でしょ?

 

Hibernation

 
MRの方がいろんな文献や資料や、Web 講演会のチラシを置いていく。
メールでもそんな物が飛んでくる。
いったいみんな勉強する時間がどこにあるんだろう?
日常診療と自分のことで精一杯だというのに。
そう思ってほとんどのものは積まれたり捨てられたりして、見られることなく消えていく。
 
結局は、個人として共感できたりする人からの情報が大事なのだと思う。
そう、人間は欲しがるものしか見えないものである。
 
そんな彼から、「あれ読んでくださいよ」と言われて、やっとと読むことができた。
「膀胱での尿吸収により夜間頻尿が防止されている」という、奈良県立医科大学講師の鳥本一匡先生の論文と言うか記事である。
 
膀胱から尿が吸収されているというのは、よくよく考えてみたら、
まあ酒飲みすぎて寝て、3時ぐらいにおしっこ行きてえなと思ってなんとなくウトウトして、朝起きたら結構濃い尿が出て、それもしょぼい量だったなということからも実は実感できるものではあるのだけれども、
患者さんに説明する時にはそんなことは一言も言わないわけで、
つまりは、先生の書かれているように、「膀胱内の尿は排尿しなければ増える一方である」という定説から自分も離れられないでいるわけであるのでした。
 
膀胱での吸収機能は、熊が冬眠する際に重要な役割を果たす。
冬眠中には確かに水分をとらないわけで、膀胱から尿を吸収することで再利用を行っていると先生は書かれており、哺乳類の体の恒常性維持に膀胱からの尿吸収が寄与しているというのはいやいやビックラコイタ見解でした(Spector et al, 2013) 。
 
ナンデモカンデモが吸収されるというわけでもなく NACL の存在が 重要である ということや、膀胱の血流とか膀胱の壁の進展が関与されるということが、実験や研究でわかっているようである。
先生達は 男性5名女性6名の被験者を対象に 就寝前飲水負荷(300kl)によって、起床での膀胱容量を調べて、第27回日本排尿機能学会で発表されている。
結論としては、就寝中に排尿しない成人では、機能的膀胱容量を超えても そこから先は膀胱容量が調整されており、つまりは膀胱内の尿量はそれ以上は増えずに睡眠が維持されているというような人もいるという、全員ではないにしろ存在するということが、この研究からは提示されているのでした。
これすごいでしょ! 一晩で300から400mlを超える尿を吸収がされるんだって。
いやいや本当にすごい!
 
Editorの本間之夫先生もあとがきで書かれてたけど、膀胱からの尿吸収の促進を促すような薬ができるような日が来るんだろうか?
 
FVC(排尿日誌)までこぎつけて、夜間多尿の患者さんを明らかにする。
新しく夜間多尿による夜間頻尿に対して承認された「ミニリンメルト」を処方してみたりする。
効果がある人もまれにあるけど、ほとんどは納得いただけない場合が多い。
これ以上はなすすべがなく、患者さんに諦めていただくことだって多い。わかっていても治療法が見つけられないのは医者としてはもどかしい。
そんなジレンマもありこういった研究はほんとに興味深い。
 
よくよく考えたら、陰嚢水腫だって産性と吸収のアンバランスから生じてくると言われてるもんね。
若い先生が、こういった臨床に即した研究をドンドンしてくれるといいなと、
そんな都合のいいことを、研究の「け」の字もない自分は勝手に思うのでした。